新譜「fragments」には全24曲の小説と楽譜が付属します。
ほしおさなえさんの140字小説は既に600作以上にのぼる(!)。その中から僕なりに季節や情景が思い浮かんだ24作をピックアップし、小説の発表順とはまた別に、春夏秋冬の1年間を巡る音のストーリーへと、再構築してみた。
自己認識として「ピアニスト」ではなく「作曲家」である当方としては、この作品はどうしても<小説+楽譜+音源>の三点セットで発表したかった。
だから通常のCDや単曲配信でなく、pdfファイルもセットで配信できるototoy.jpからリリースする必然性があった。実はピアノの録音よりも、楽譜の校正にものすごく時間をかかっていたりして。
作曲しながら、子供のころ愛奏したプロコフィフ「つかの間の幻影」 ハチャトゥリアン「少年時代の画集」 ギロック「抒情小曲集」 ドビュッシー「前奏曲集」といった標題音楽の小品集を思い出していた。
また、フォーレ「ドリー」 や ラヴェル「マ・メール・ロア」 のように、子供や初心者が弾ける程度の難易度も念頭に置いていた。これは、自分がライヴの時あまり練習せず弾けるようにという理由で(苦笑)
とはいえ「クラシック」の楽曲にしようという意識は全くなく、気軽に弾いたり聴いたりして楽しめる、これは一種のムード音楽。24曲だからって調性を網羅するとか、そういうことも特に考えなかった。
芸術的価値とか斬新さもねらわず、ひたすら自分の愉しみのためだけに。息を吐き出すように。みた夢を書き留めるように。一筆書きのノリで毎晩作曲し続けた結果の、ドローイング集のようなものとも言える。